『湾生回家』について

『湾生回家』は真実の物語

「日本人が台湾人を軽蔑するかもしれない・・・」

悪い予感が『湾生回家』の映画監督、黄銘正氏の脳裏に過った。

 

 台湾で金馬賞にノミネートされたドキュメンタリー映画『湾生回家』のプロデューサー田中實加(陳宣儒)が、公開されている自身の身分が偽りであった事を告白。自身の出生は湾生とは繋がりも無く生粋の高雄出身の台湾人である事を認めた。それに対し当映画の監督を務めた黄銘正氏は1月2日、「日本人が台湾人を軽蔑しないかが最も心配である」との懸念を表明した。

 

 「『田中實加』の湾生ドキュメンタリーは一体いつ撮影が終了し上映される?」というFacebookのページで、2014年、その事実は明らかとなっていた。そこに投稿された日本の産經新聞の記者の記事よると次のような状況だ。

 

 田中は自身を日本語を話せない日本人であると紹介。幼い頃、母親が亡くなった後、6歳で祖母に連れられ青森へ。そこで育った後、台湾の養父と共に渡台したとの事であった。しかし、取材の中で彼女の生い立ちについて辻褄が合わないことに気づき、記者が疑問を問うた所、彼女は嘘をついていた事を認めた。

 

 黄氏は、彼女と湾生とを一緒にしないでほしい、それは不公平であると言う。湾生の皆様は黄氏を信じて取材を受けてくれ、撮影にも応じてくれたのである。黄氏が本日こうしてメディアの取材を受けたのは湾生の皆様とこのドキュメンタリー映画を護る為であるとのこと。

 

 黄氏は続けて言う。このドキュメンタリー映画の着想と陳宣儒女史とは無関係である、と。彼女が映画の為として提供した資料は断片的であり裏も取れず、また紹介された大部分の方々は既に亡くなっており、撮影の一助となるものは全く無かったという。従い、彼のチームが自ら取材を行い映画の素材を集めて行ったとのこと。皆様は先に本があり、それをもとに映画が作成されたと思っているかもしれないが、全くそうではなく、本の内容と映画の内容とは全く異なっており、更に言うと先に映画が有り後に本が出来た状況である。かつ、彼女はこの映画作成には関わっておらず、出資者として関係しているだけである、とのこと。

 

 

 最後に黄氏は訴える。この映画の主人公は湾生の方々であり、能く能く彼らの人生の物語に耳を傾けてほしい。湾生の無私の真心と今回の彼女の事を決して混同する事無きよう重ねてお願いしたい、と。

*当記事は1月2日に台湾の『民報』に掲載された記事を元に「集い事務局」が翻訳しました。